コラム

COLUMN
Vol.14

インタビューのすすめ

2022/06/01

我々人事コンサルタントにとって、インタビュー調査とサーベイ調査はとても重要な情報源です。
この2つの調査手法はなんといって社員の声を聴くことができるのがメリットです。日頃会社や上司、人事制度について感じていることや、こうしてほしいという思いを伺い知ることができます。
今回はインタビュー調査に絞って考えてみたいと思います。

サーベイ調査との違い

サーベイ調査は聞きたいこと、明らかにしたいことをアンケート項目化して、社員全体を対象に実施します。最近ではテクノロジが進化し、エンゲージメントや従業員満足を簡単に気軽に実施することができます。中には1週間ごとにサーベイを実施して社員の感情を把握するパルスサーベイという手法も出てきました。
サーベイは社員の声や感情を数値化することで組織の状態を把握できるのが最大の強みで、組織ごとに分析したり、年齢層や役職別に分析したりすることで、モチベーションを下げている組織や階層、やりがいをなくして離職しそうな組織や階層などをとらえることができます。

一方インタビュー調査も社員の気持ち、状態を把握することができます。しかし、社員全体にインタビュー調査をすることは時間的には難しく、また得られた情報を数値化すること、数値によって比較することも困難です。
しかし、インタビュー調査はサーベイ調査にはない魅力があります。
一つは、サーベイ調査や自己申告などの情報を総合的に勘案して社員の状態や職場の状況を把握することができるという点です。人間にしかできないことで、様々な情報を基にしてインタビューによって確認、関連づけることができます。また、非言語情報も収集することができます。インタビューの目的にもよりますが、インタビュー対象者に情報を提供することや動機づけすることもできます。
このようにサーベイ調査とインタビュー調査は持ち味、強み弱みがあります。それぞれの調査手法の持ち味、強みと目的に合わせて組み合わせて使うのが理想ということになります。

インタビューの作法

我々外部の人間が役員や社員の皆様に1時間~2時間のお時間をいただくのですから、当然作法も必要になります。

作法の一つ目は目的をはっきりさせておくことです。当たり前のことですが、何のために実施するのか、何を確認するのかを置いてインタビューに臨まないと行き当たりばったりのインタビューになります。

二つ目は、目的や対象者(役職などの階層)に沿って時間割を決めておくことです。なにせ初対面の社会人同士が対話するのですから、どのような流れで進めていくのか、どのテーマをメインするのか、おおよその時間を決めておくのです。こうすることで、聞きそびれを防ぐことができます。

三つ目は、質問項目を用意しておくことです。当日の流れで質問はしていくものの、あらかじめ投げかける質問を準備することはとても大事です。全員に同じ質問し回答をいただくことによって、何が違うのか、どこがどのように違っているのかを把握することもできます。

四つ目は、インタビュー対象者に関する情報をインプットしていくことです。この点はお客様によってお考えが違うことがあります(属性情報は提供不可というお客様もいらっしゃいます)が、可能な範囲で部門、役職、入社年次といった情報、どのような略歴をお持ちなのかをインプットしておきます。こうすると、〇〇専務は**年に他社からいらっしゃった方だなとわかるので、入社当時はさぞ文化の違いに戸惑われたのではないか、中途採用者が経営トップ層になられたのは相当なご苦労があったのではないか、などいろいろな仮説を作ることができ、ここを深堀して聞いてみようというシナリオを作ることができます。

インタビューの技法

インタビューで最も大事なスキルは質問するスキルです。
インタビューに不慣れな方は、質問の時間が長く、何を聴きたいのかがぼやけてしまうことがあります。引き出したい情報を的確に引き出せる質問を用意するのが最も大事で最も難しいことでもあります。
以下は筆者自身の体験に基づくものですが、ご参考まで申し上げます。
コンピテンシー評価項目を設計する場合は、その方の優れた行動、仕事での行動例を引き出したいので、仕事にまつわるお話を重点的に深堀していきます。
ある仕事経験をきっかけにする場合は、
ー「最も印象に残っているお仕事経験はいつごろ、どのようなお仕事だったのでしょうか?」
ー「どのようなきっかけで取り組むことになったのですか(状況を聴く)」
ー「当時、どのような目的(目標)をもっておられたのですか(目的・目標を聴く)」
ー「目標達成に向けて、具体的にはどのような行動をしたのですか(行動を聴く)」
ー「どのような結果になったのですか?結果は周囲にどう受け止められましたか(結果を聴く)」
といったパタンを基に、深堀していきます。特に行動の部分は、なぜそういう行動をとったのか、葛藤はなかったのか、何に気づきや学んだのかもお話していただくと、行動の意味、重要性が理解できます。

本音を引き出す場合は、インタビュー対象者と我々との信頼関係が最も重要となります。ですので、自分はこのような人間であることや人となりをわかってもらうために、私たちの情報提供が欠かせません。
そのうえで、受け答えが大事になってきます。リアクションは大きめにすること、相手の感情や気持ちに触れること、その方らしさが表れていると思ったら理解を投げかけること、目線を合わせることなどが大事になってきます。
限られた時間内ですが関係構築できれば、本音を話してくれる確率が高くなります。

スキルや手法は他にたくさんあると思いますが、技法の向上には場数は欠かせません。
場数を踏み、振り返り、気づきと学びを繰り返してスキルの向上を行うことです。

人事部門にとってのインタビュー

人事部門に必要な能力を行った調査によると、最も必要性が高いものは、
「現場にネットワークを持ち、人・組織の現状を把握すること」でした。
ある企業の人事部員は、人事は社員の状態を目と耳によって確認せよという方針の下、全国を飛び回り、社員と面談を行っています。別な企業の人事部員は数千人の社員と年1回、必ず人事面談を実施しています。
人事の役割は何か?
人事にはどのような能力が求められるか?
今後も議論が続くでしょうし、変わっていくものと思いますが、社員の状況、状態をしっかりと把握することは今後も大事な能力ではないかと思います。
社員の状態を把握したり、本音を引き出したりするためにも、インタビューのスキルを磨き続けたいものです。

Editor Info.

エグゼクティブコンサルタント

平田 伸正

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