最近、「キャリアって言われても、どう考えればいいのか分からない」という声を若手社員からよく聞くと人事の方から時々お伺いします。確かに、かつてのように「会社にいれば自然と昇進していく」という単線型キャリアの時代は終わりを迎え、今は誰もが「自分のキャリアを自分で描く時代」と言われています。とはいえ、「どう描けばいいのか」は、なかなか明確ではありません。そんな中で注目されているのが、「キャリアは“積む”ものから“創る”ものへ」という考え方です。こちらについて考えていきたいと思います。
キャリアに正解はない時代
かつては「年次を重ねて管理職へ」というキャリアモデルが多くの人の中にありました。しかし今は、若手社員も中堅社員も、そしてシニア層でさえも、「この先どう働くか」「どう生きるか」を自分で考える時代です。
特に若手層では、「自分が何にワクワクするか」「どんな働き方がしたいか」「社会にどう貢献したいか」という、『内面の価値観』を重視する傾向が強くなってきています。一方で中堅層になると、チームのマネジメントや後輩育成を求められながらも、「自分の成長実感がない」と悩む声も少なくありません。
こうした中でカギになるのが、「対話」そして「探究」と考えます。
上司と部下の「対話」がキャリアのヒントに
今、企業の中で広がってきている取り組みの一つが「1on1ミーティング」。上司と部下が定期的に対話するこの仕組みは、評価や業務の指示だけではなく、「今、どんなことを感じてる?」「どんなことに関心がある?」といった「キャリア」や「内面」の話ができる場として、非常に有効といわれています。
実際、1on1をきっかけに、若手社員が「実はこういう業務に挑戦してみたい」と声を上げたり、中堅社員が「もう少しチーム運営に関わりたい」と前向きになる例も多く聞きます。
上司側にとっても、部下の意欲や悩みを知ることで、適切なサポートやアサインにつなげられる。まさに、「伴走するマネジメント」が求められているのです。
自分の仕事を「創る」という視点 -ジョブクラフティングー
もう一つ注目されている考え方に、「ジョブクラフティング」があります。これは、与えられた仕事の中に自分なりの工夫や意味づけを加えることで、「自分にとってやりがいのある仕事」に変えていくというもの。
たとえば、単純なデータ入力の仕事でも、「この情報を他部署にも役立てられないか」と視野を広げることで、自分の仕事に新たな価値を見出すような考え方です。
ジョブクラフティングの面白いところは、「異動」や「昇進」といった環境の変化を待たなくても、「今の仕事の中でキャリアを創ることができる」という点です。若手でも、中堅でも、日々のちょっとした発想の転換や行動で、自分の成長や納得感につながるキャリアのヒントが見つかるのです。
キャリアは「他人と比べない」ことが大切
最後に、キャリアを考えるときに大事なのは、「他人と比べすぎないこと」と考えます。同期と比べて出世が早い・遅いとか、SNSで活躍している同世代と自分を比べて落ち込むとか、、それをやり始めると、キリがありません。
キャリアは「自分のもの」であって、「他人のレールに乗るもの」ではありません。今の自分にできること、やってみたいこと、小さなワクワク。それを少しずつでも追いかけていけると、未来の働き方もきっと変わってくるはずです。
「キャリア」という言葉に気後れせず、「ちょっと先の自分を考えてみる」こと。それだけでも、立派なキャリア開発の第一歩です。上司との1on1で話してみるのもよし、自分で日記を書くのもよし。今の自分の「働く軸」に、少しだけ目を向けてみてはいかがでしょうか。