「ジョブクラフティング」という言葉をご存じでしょうか?近年、働き方が多様化する中で、このジョブクラフティングが注目を集めています。ジョブクラフティングとは何か、なぜ注目されているのか、そしてそれがもたらす効果について考えてみたいと思います。
1.ジョブクラフティングとは
ジョブクラフティングは、自分の仕事や職務内容を、仕事そのものの形や方法、あるいは人間関係を見直し、再構築することで、仕事に対するモチベーションや充実感を高めることを目指します。つまり、自分の興味や強みに合わせて意図的に変えていくプロセスを指します。
ジョブクラフティングには大きく「業務」「関係性」「認知」の3つの側面があります。
業務クラフティング:自分が担っている業務内容や範囲を、自分がやりがいや興味を感じるような形に構築していくこと。
関係性クラフティング:同僚や関係者との関わり方(質や量)を見直すこと。
認知クラフティング:自分の仕事に対する捉え方や意義を再定義すること。仕事の意味や価値について新しい視点から捉え直し、やりがいや意義を見出すことができます。
これらの3つのクラフティングを通じて、従業員は自らの働き方や役割を、自分らしい形に「クラフト」することができると言われています。
2. ジョブクラフティングのメリット
ジョブクラフティングは単なる自己満足ではありません。積極的にジョブクラフティングを行っている従業員は、仕事の満足度が高く、モチベーションが維持されやすいことが確認されています。具体的に考えられるメリットを3つご紹介します。
① モチベーションとエンゲージメントの向上
自分で意図的に仕事を設計することで、業務に対する責任感が増し、やりがいを感じやすくなります。こうした内発的な動機は、従業員のパフォーマンス向上に直接寄与すると考えられています。
② ストレス軽減
自分の業務を主体的にコントロールすることができると、ストレスも減少しやすくなります。たとえば、得意なタスクに時間を多く割くことや、業務のやりがいや意義を見つけることで、過度な負担感や消耗感を軽減する効果が期待されます。
③ キャリアの成長と自己実現の可能性
ジョブクラフティングを行うことにより、新しいスキルや知識を習得する機会が増え、自分のキャリアパスを広げることができます。さらに、これを通じて自己成長や自己実現につながるため、従業員にとっても企業にとっても長期的に大きなメリットをもたらすと考えられます。
3. ジョブクラフティングを実践する方法
実際にジョブクラフティングを始めるには、どのようなステップがあるのでしょうか。以下に具体的なアプローチをまとめてみました。
ステップ1:自分の仕事を振り返る
まずは、現在の業務内容や役割を振り返り、「自分の職務内容は何か」「職務上の関係者は誰がいるのか」「仕事上の課題は何か」「仕事で挑戦していることは何か」などを具体的に洗い出すことが土台になります。
ステップ2:自分の感情を分析する
ステップ1で振り返った、職務や人間関係、課題や挑戦に対して、ポジティブなのかネガティブなのか、どのような感情を抱くのかを分析します。
ステップ3:自分の能力を分析する
ステップ1、2で分析した内容に対して、自分が持つどのような「強み」を活用することができるか。「強み」「弱み」「スキル」に分けて考えてみると整理しやすいです。
ステップ4:働きがいを考える
分析した職務や人間関係や課題はエネルギーを与えてくれるものなのか、消耗させるものなのか。自分の仕事は自分にとってどんな意味があるのか。それぞれを以下の3つの観点で整理してみます。
・ジョブ:やらなければならないから、経済的な理由から、等
・キャリア:自分のためになり、キャリアアップにつながるから、等
・コーリング:自分にとって深い意味があり、自分がやりたいことで、楽しいこと、等
ステップ5:意思決定する
ステップ1~4まで整理したことを見つめなおし、今後、自分の仕事をどうするか、3つの方向性で考えてみます。
・ストップ、または調整する:現在の仕事、人間関係、課題に終止符を打つ、もしくは仕事量を減らして調整する、助けを求める、など
・継続する:好きで、エネルギーを感じるのであれば継続する
・捉え方を変える:考え方は変えられるか、視点を変えられるか、考えてみる
ステップ6:行動計画をたてる
何から始めるか、どのように変えるか?、を考えます。全てを一度に変える必要はありません。まずは手軽に実践できる行動から始めてみることが重要になります。
4. おわりに
「キャリア迷子」問題(*以下参照)を例とした「キャリア」について大きな課題を感じていたこともあり、今回「ジョブクラフティング」をテーマに上げました。
*「キャリア迷子」問題
「自分の能力や専門知識の市場価値が分からない」「自分にあった仕事の見つけ方が分からない」「自分が人生やキャリアでどうしていきたいか分からない」といったことに、約8割が陥っていると言われています。日本人の多くは、仕事の見つけ方やこの先のキャリアの希望にも答えを持てない状態、いわば“キャリアの迷子”に陥っていると言われている。
確かにこれだけ環境変化が激しい状況で、例えば「5年後、10年後のキャリアを考えてみよう」と言われても想像できないのは仕方がない事かもしれません。そんな中でモチベーション高く仕事をし続けることも難しい。
一方、ジョブクラフティングは、すでにある仕事をカスタマイズすることができます。それによって、自分の仕事と仕事への取り組み方を再設計し、自己実現やモチベーション向上、仕事への満足感、ストレス軽減など多くのメリットをもたらします。もちろん、全ての人が一気に実践するのは難しいかもしれませんが、少しずつでも自分の働き方を変えていくことで、日々の仕事に対する満足度は確実に高まるでしょう。ぜひ、皆さんも自分なりの「ジョブクラフティング」にチャレンジし、より豊かな働き方を手に入れてください。