コラム

COLUMN
Vol.1

事業部の役員が1on1を活用すると

2022/01/01

ご紹介するのは、あるクライアント企業の挑戦であり、事業を推進するための1on1の活用の話です。またオンラインという環境を効果的に活用した話でもあります。
ある企業の事業部(約700名)を管轄する役員からの依頼で、マネジメントのスタンスやコーチングのスキル向上を目的に1on1の導入をお手伝いしました。
他の企業にもみられるように、ひとまずの成果として良い変化を獲得する面と、苦労し続ける面の両面が出てきました。
ここからの取り組みが秀逸で、1on1の機能およびそれを実施する現場の実態をそのまんま捉え、続く打手を繰り広げます。
1on1の実態を直視する
1on1は基本的には上司と部下のタテのコミュニケーションです。部下と課長、課長と部長のつながりであり、会社の中にはタテのラインが何本も並走している形です。
1on1の機会を使い、部下のための時間・空間の中でさまざまなテーマについて対話をする。そのことで信頼関係を育み、部下の気づきを促しながらモチベーションや育成に繋げていく。言うのは簡単ですが、いろんな状況やタイプの部下を抱える上司にしたら至難の業です。
これまでに経験したことのない状況が押し寄せる管理職や、ベテランまでも部下にせざるを得ない新任管理職にしてはなおさらです。
上司は各種管理職研修や書籍などで学んだ「あるべきマネジメント像」を手がかりに、職場で悪戦苦闘するわけですが、自分のやり方がそれで良いのか、他の管理職はどうしているのか、特にオンラインの状況になった今、ほとんど見えなくなりました。
つまり、誰が悩んでいるかというと管理職なのです。一方部下の方も大変です。1on1の繋がりだけだと、上司は1人ですので、たまたま巡り会った上司の持つ経験や価値観や判断基準に大いに影響を受けた単線型のマネジメントを受けることになります。
これらの現実をこの役員は直視します。
オンラインでダイナミックな学びの場をつくる
ご紹介している事業部の組織ですが、組織長と言われる方々は57名(部長級・課長級)います。彼らが一堂に会する場(チャット)をオンライン上に作り上げました。一人一人が持ち込む現場の情報(1on1の実践内容)をもとに、組織長によるダイナミックな経験学習の場を作ったのです。
オンラインだからこそできる環境づくりであり、オンラインだからこそ、対面よりも失敗談や分からないことも素直に開示できたり、チャットに書くことで内省が深まるという相乗効果もあったと聞きます。
研修や書籍では学べない、自社のリアルな題材をもとに、より多くの人の想いやアイデアが交流される。多くの人がその情報に刺激や学びを得て現場に持ち帰って実践し、また学びの場(チャット)に持ち帰ってくる。なんと実践的な管理職教育の場でしょうか。
この取り組みの狙いを私なりに整理すると
①現場からさまざまに持ち寄られる情報(苦労・失敗談含む)をもとに、多くの知恵やアイデアで解決するとともに、組織長全体の学びにつなげる。
②その結果、部下は多くの組織長の視点やアイデアを直属上司を経由して還元を受ける
③1on1が吸い上げる現場の情報の中にある、次なるサービスや事業の芽を拾い、スピーディーに事業の展開や経営判断につなげる
もちろんこの取り組みの背景にはここでは紹介しきれない、丁寧な場づくりやコミュニケーションの基準やルールづくり、そして苦労がありました。
そして何より、どうすれば継続するか定着するかという次元を越えて、1on1という機能が吸い上げる現場の情報やタネを、マネジメントの強化や新たなサービスの創出に活用しようとする経営者の強い意志と意図がそこにはありました。

Editor Info.

取締役
エグゼクティブコンサルタント

廣瀬 信太郎

STAFF紹介