コラム

COLUMN
Vol.30

人が組織を成す限り…

2024/07/01

HR領域のコンサルタント・コーチとして、人事制度改定や組織開発、エグゼクティブコーチングなど、いろいろなお仕事をしております。
その中にはHR領域をまたいだ、組織運営全般のご支援をする機会もあります。(主に成長企業においてです。)

成長企業においては、事業が拡大することでタスクが増え、一人ひとりのキャパがオーバーし、役割を細分化しないと回らなくなります。
そしてその為に新たに人が採用され、部署や階層が増えていきます。

一人で多くの領域を担当していた時は、判断から実務まで自己完結していたものが、部下に指示したり、他部署と調整・連携していくことになります。
そしてその時々での最適な組織体制や業績指標、会議体が生まれ、業務フローが構築されます。

ところが更に組織が成長すると、せっかく構築した業績指標や会議体、業務フローも実態と合わなくなり、再構築する必要が出てきます。
しかし今度は人・組織が増えているため、新しいやり方を提案して変えることの合意形成が難しくなっていきます。

自分自身もスタートアップの1人目人事として仕組みの構築・導入や会議体の再整理などをしてきましたが、その頃から組織も更に拡大し、実態と仕組みが合わなくなってきています。
このように数名から数十名、その先の組織拡大期を見ていると、人が組織を成すことで生じる課題がよくわかります。

一方、大企業をご支援する中でも、業務フローや会議体の不具合に関するお悩みは同じようにあります。
いくら事業が成熟期で組織規模が安定していても、組織を構成する社員は変化しますし、環境変化に対応して事業も戦略を変えていく必要があるからです。
しかしながら関係者が多くて、なかなかやり方を変える合意形成が得られない…。

ここで大事になるのは組織長など権限のある方が、常に目的志向で組織を見ながら、やらないことを決め、組織体制や業績指標などを思い切って見直すことです。

会議を例にあげると、それは意思決定をするものなのか、情報を共有するものなのか、誰が参加すべきものなのかを見直せば、事前準備や拘束時間の工数が削減され、より生産的に仕事ができるはずです。
すごく当たり前で誰もが理解していることですよね。

では、皆様の会社では、
・報告だけの会議に陪席者がたくさん参加するがために、相談したい管理職の時間が確保できない
・実務をけん引するリーダーが「念のため」に上司が出る会議に同席し、日中に作業時間が確保できずに残業する
なんて事はありませんか?

実はエンゲージメントや1on1を通じた自律的なキャリア形成といった我々HRコンサルタントになじみ深い、かつ取り組めばきっと組織や働く人にとってよいであろうテーマは、それに取り組む時間と気持ちの余裕がなければ施策は定着せず、絵に描いた餅になります。
「現場を顧みず、本部がまたやることを増やしてきた」という受け止め方になってしまうのです。

人が組織を成す限り、頭数だけでなく個々の成長レベルも含め、組織は動的なものとして変化し、無駄や不足が生じ続けます。
だからこそ、体制ややり方が最適になるように見直し、その上で働きがいなどHRテーマに取り組めば、人はモチベーション高く戦略を機能させられると私は思います。

つまり、忙しさから「とりあえず、これまで通り」と放置せずに、目的に立ち返り、現状の組織体制や業績指標、会議体、業務フローを見直すことで、エンゲージメントやキャリアといったテーマに取り組み、個々の成長を通じて組織力を高めることができるのです。

しかしながらスタートアップも大企業も内側からはなかなかやり方を見直すことができず、HRテーマの施策が多くの現場で浸透しづらい状況にあると、日々のご支援を通じて感じています。

この課題は人事だけ、経営企画だけで個別に取り組むのは難しく、組織を俯瞰して横断的に取り組む企画人材や、関連する組織に横断的にアプローチして支援を行える第三者の存在が必要ではないでしょうか。

これからもHRテーマのソリューションを「べき論」で示すだけでなく、現場がより前向きに取り組める状況の構築をご支援できるよう、日々精進したいと思います。

Editor Info.

シニアコンサルタント

小河 泰隆

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