コラム

COLUMN
Vol.21

人事評価の納得感

2023/01/01

以下の田中君の「指導力」に関する人事評価、皆さんならどのように評価しますか。

田中君は中堅社員。5月になり、田中君の下に新入社員が配属されてきた。田中君には、新人の指導担当を依頼することにした。田中君は「任せてください」と前向きに受けてくれた。
田中君の新人への指導を日々観察していると、以下のような状況であった。
◆田中君は自分の仕事を後回しにしても、新人の仕事ぶりを気にかけて相談にのっている。
◆体育会系出身の田中君は熱血指導スタイルで、一度教えたことが出来ていないと、感情的に怒ることがある。
◆7月のある日、その新人から私(上司)に「最近、田中さんから怒られることが多くて・・・あまりに一方的なんです。言っていることが分からない時もあって」という話があった。田中君の指導を、素直には受け入れていない様子であった。
◆田中君はそのことに気づいておらず、積極的ではあるものの、一方的な熱血指導がその後も続いている。
今は9月。上記の田中君の関わりの結果、この新人は今ひとつ伸び悩んでおり、仕事も楽しそうではない。そして10月の人事評価の時期をむかえた。上司のあなたは、田中君の「指導力」をどのように評価(S~Dの5段階)しようか悩んでいる。

おそらく「高い評価(A)は付けられない。標準評価(B)もどうか…。やはり低い評価(C)を付けざるをえない」という感覚ではないだろうか。標準評価(B)が「期待に概ね応えている=このまま頑張れ」であれば、そのレベルではない。私もCをつけるだろう。

時期は過ぎ、田中君への評価のフィードバック面談。田中君の指導力の自己評価はA。自分自身はしっかり関わっていると思っている。そこで上司のあなたはこのように伝える。
「指導力はCだよ。7月に新人が私のところに来て、君の指導が一方的と言っていたんだ。指導というのは相手に合わせないと…」

この上司の発言を聞いた田中君はどう思うだろうか。「その時言えよ」ではないだろうか。7月の時点で田中君に伝えていれば、関わり方を変えることもでき、もしかしたら指導力はAになっていたかもしれない。田中君の指導力をCにさせたのは、上司の責任ではないか。上司の部下指導力こそ、Cではないか。

実はこれは考課者研修で用いているケースと解説である。このケースを用いて、以下のメッセージを伝えている。
*人事評価とは日々の指導の延長であり、年に1度まとめて言う場ではない
*特に低い評価になる際は、都度指導すること。「後だしジャンケン」は納得感がない
突き詰めて言えば、「人事評価の納得感=上司への信頼感」である。日頃の指導・支援の積み重ねが、人事評価の納得感に大きな影響を与え、さらには上司への信頼感につながるのではないだろうか。

Editor Info.

名古屋支社長
エグゼクティブコンサルタント

西田 直史

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