コラム

COLUMN
Vol.27

変わったこと、変わらないこと

2024/02/22

私は今まで人事制度設計や社員教育制度の改定などをお手伝いしてきました。
プロジェクト発足時、ほとんどのケースで組織の現状や社員の要望、人事制度の運用状況を確認するためにアンケートやインタビューを行います。
私が最も好きな仕事です。
社長や本部長といった経営幹部の方のお話をお伺いすることは貴重な勉強の機会になります。日々業務に邁進されている管理職のお話をお伺いすると、なんとかこの方々のお役に立てるような施策を実現しなくては…との想いを強くします。
インタビューには各職場を牽引しているハイパフォーマーの方が選ばれることが多いので、お話はいつも興味深く、お客様の現状や組織風土を肌で知るための重要なプロセスとなっています。
大好きなインタビューですが、私が駆け出しだった20数年前にお聞きした内容と、最近のプロジェクトでお聞きした内容が大きく異なっているか?と聞かれると、答えはYesでもあり、NOでもあります。

変化を感じている点としては、よく言われていることではありますが、働き方の多様化が進んでいるということです。
その要因の1つに、ご存じの通り女性の労働力率の向上があります。2000年時点では男性雇用者と64歳以下の無業の妻から成る世帯(いわゆる専業主婦世帯)の数は約900万強、共働き世帯数は約900万弱でしたが、2022年データではそれぞれ430万世帯、1,190万世帯と変化し、共働き世帯は専業主婦世帯の約3倍となっています[男女共同参画局;男女共同参画白書令和5年版より]。
女性の労働力率の向上の背景には、年齢上昇と共に正規雇用率が低下するL字カーブという別の問題もありますが、ともかく、出産・育児を担う30代~40代の共働き率が増えていることで人事の在り方も大きく変わってきています。
育児等のための短時間勤務者が増加することで業務分担が難しくなった、転居を伴う異動を拒む社員が増えて組織形成に支障をきたしている、管理職への登用を希望しない社員が増えた…といったお話がどの企業でも出てきています。

また、Z世代(定義は定かではありませんが、1990年代半ば~2010年代初期生まれを指すことが多いようです)の社員も増えてきています。デジタルネイティブ、タイパ重視…などと言われていますが、個人的にはその特徴や傾向を共通項でくくって捉えることが他の年代以上に難しいと感じています。
2020年から小中高に『キャリアパスポート』が導入されるなど、学校におけるキャリア教育の形も変わってきており、若手社員の就業観や自身のキャリア形成への意識はより多様になってきます。人事制度も教育プログラムも、こうした変化に応じてどんどん進化させていかないといけないな、と気を引き締めています。

一方で、変わらないと感じていることの筆頭は「人が人を評価することの難しさ」です。
― 評価基準が曖昧で、正しく評価してもらえているのか分からない
― 部署や上司によるバラツキがあって困っている
- 売上金額など目に見える明らかな結果しか評価されていないように感じる
― 頑張っている人もそうでない人も、あまり差がつかないから頑張るだけ損
などなど、評価制度についてお尋ねするとマイナス面を指摘されることが以前も最近も多いです。

例えば業績評価では、目標内容が一人ひとり異なりますし、経営方針や部署方針などにより毎期変わりますから、人事部が全ての目標の評価基準を予め定めておくことは不可能です。そのため、適切な目標設定ができるかどうか、納得感のある評価結果となるかどうかは、各職場のマネジャーの力量に左右される部分が大きくなってきます。
人が人を評価するのは、本当に難しいです。完璧に正しい評価、これが正解だという評価結果がどこかで決められている訳ではありません。判断していくしかないのです。
評価の正しさを追求することも確かに大事なことですが、私は評価の納得感を高めることが最も重要だと考えています。評価の納得感は「公正性を高めるための仕組み×透明性を高める運用×上司への信頼度」で決まります。
評価シートを変えること、評価結果のすり合わせを行うこと、日常のマネジメントを通じて上司と部下との信頼関係を築くこと…評価の納得感を向上させるためにできることはたくさんあるはずです。

人事を取り巻く課題、変わったことも変わっていないこともありますが、各企業で働く一人ひとりの方を応援できるような人事・教育制度を目指してこれからも取り組んでいきたいと思います。

Editor Info.

シニアコンサルタント

村山 鈴子

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