コラム

COLUMN
Vol.47

強い意志の魅力

2026/01/05

昨年10月に日本初の女性総理が誕生して約3カ月。就任後、矢継ぎ早に政策を進める一方で、国会での彼女の発言をめぐり隣国をはじめ、一部の国内からも辛辣な非難が続きました。しかし彼女は発言撤回も謝罪もしませんでした。これまでの典型的な日本の総理大臣の姿勢とは明らかに異なる彼女の対応に多くの国民が支持を示しています。そして、日本の主権を強固なものにするという、その強い意志に多くの国民が魅せられていることもまた事実です。

今月は、強い意志の魅力メカニズムについて探ってみようと思います。私たちは、なぜ強い意志を持つリーダーに惹かれるのでしょう。

もともと人類は、強い決断者のもとで生き延びてきました。狩猟時代には、危険な獲物との遭遇や移動先の選択、他部族や他集団との衝突など、人は常に危険にさらされていました。その中で、迷わず決断でき、覚悟を示せるリーダーは、行動を伴にする他の人間の生存率を高める上で欠かせない存在であったことは想像に難くありません。進化の過程からみると、人間の脳は、強い意志を持つ者は自分の生存率を高めてくれる存在という反応が起こるように設計されているのです。

その脳には偏桃体という部位があります。主に不安や脅威といった感情に深く関与している部位なのですが、ここは、私たち組織人がしばしば直面する“不確実性”を脅威として処理するところでもあります。決断できない上司、周囲に影響されて発言がころころと変わる上司、自信なさそうに指示を出す上司は、脳が自動的に危険信号を出してしまうのです。一方、未来を示し、はっきりと意思を示す上司に対して脳は頼れる存在という信号を出します。脳が持つ機能からみても、強い意志には魅力を感じる仕組みとなっているのです。

ところで、あなたがタフな仕事を担うことになったときやストレスフルな状況に置かれたとき、自分にとってこの仕事の意味や価値は何だろうと考えたことはありませんか。成熟した人間ほど何かにつけ意味・意義を求めてしまうものです。そのとき、あなたのリーダーの強い意志が影響を与えてきます。リーダーの価値観や信念、思い描いているストーリーの一貫性、独自の意味体系は、あなたの不安や迷いに対する「意味付け」に多大な影響を与えることになるのです。

そして、強い意志や確信のある語り方、自信のある態度や迷いのない表情に対して、人はある種の有能さを感じることも確認されています。強い意志は有能であることの“疑似シグナル”になるわけです。特に不確実な状況になればなるほどこの効果は高まります。集団の中での個人間認知という観点からみれば、このような理由もありそうです。もっとも、中には意思も信念もないのに、テクニックとしてこのような振る舞いを演じることができる者もいますので、そこは見分けなければなりません。

今日ここで述べたリーダーの強い意志とは、それを選択することで一部の利害関係者から強い批判を受けたり、それを選択した結果が大失敗に終わったりするかもしれないという不安を持ちつつも、それでも何かを選択してプロセスも結果もすべて引き受ける覚悟を持つということであって、決して、先々のことをたいして考えもせずに持論を強引に押しつけることではないということを最後にお伝えしておこうと思います。

さて、いかがでしたか。こうやって考えてみると、強い意志に対して多くの人が「安心」「期待」「尊敬」という反応を起こすのもなんとなく理解できますね。今月はリーダーが持つ機能のひとつである強い意志について、進化心理学、脳科学、認知科学、社会心理学の観点から探ってみました。一方で、この強い意志は、時に独裁化や盲従文化を生むこともあります。また機会があれば、このような副作用メカニズムについても探ってみようと思います。

Editor Info.

シニアコンサルタント

宮崎 茂

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