コラム

COLUMN
Vol.5

日本版JOB型のゆくえ

2022/01/01

日本版JOB型の目指すところ
「JOB型人事制度」の議論が盛んです。
●欧米式のJOB型は、日本の「新卒一括採用&異動を通じた育成」には不向き
●変化の大きい業務やいわゆる「何でも屋」は、職務内容を明確にすることは困難
といった否定論がある一方、
●ポスト数を制限し、総額人件費を管理
●定年延長に伴う適正水準での処遇、さらには高度専門人材の確保
の面からの必要性も言われています。
そこで、出てきた言葉が「日本版JOB型」。その一つが「役割等級」です。これも、「職能と職務等級の良い面を持ち合わせている」という肯定論もあれば、「結局は昇級ばかり」「職能と何が違うのか」という否定論もあります。
「全ての制度にメリット、デメリットがあり、会社の業態と人事の思想によって選択すべき」と結論づければ、ごもっともですが、これでは学者の目線です。確かに、「日本型雇用(人ありき)」と「JOB型(仕事ありき)」は相容れないものがありますが、両方のメリットを実現する方向性はないのでしょうか?
結論から言うと、「大括りの職務の中で、実力伸長をランク付けする役割等級」は有効と考えます。「役割=職務×実力」と定義し、「同じ職務でも誰が就くかによって役割の大きさは異なる」という思想です。特徴を4点、記載します。
1.ポスト職は定員管理
どのような野球チームでも4番バッターは一人です。「部長候補が二人いる。今の部を半分に割って、部長を二人就けよう」では、人件費が増えるだけではなく、組織内の連携も取れません。
2.大くくりの職務の中で、実力・職責の差をランク付け
部長といっても「大規模・高難度」のポストもあれば、「中規模・定常業務メイン」のポストもあります。ここは差をつけます。ただし、最後は業績考課で処遇反映しますので、「期待値の明らかな差」を反映します。
3.メンバー層は実力基準
メンバー層は実力基準です。入学方式とし、「上位の等級の役割をすでに担っている」際に昇格します。年功で判断しては全く意味がありません。同一等級に長くいる人が出てきますが、それは「当然」です。
4.降格ではなく「下位への移動」
これは「言葉遊び」と指摘する人もいるでしょう。ただし、実力の低下は現実ありますし、ポスト職の入れ替え、さらには定年延長に伴い役職を降りた人が担当レベルの業務を担うこともあり得ます。
この考え方のデメリットは「運用次第」なところです。年功で運用しては、職能資格等級と何ら変わらないものとなります。「意思を持った役割等級の設計と運用」が、「日本版JOB型」の目指すところと考えます。

Editor Info.

名古屋支社長
エグゼクティブコンサルタント

西田 直史

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