コラム

COLUMN
Vol.32

百年の孤独

2024/09/01

私が社会人となった30年前、焼酎ブームがくる数年前のこと、ある居酒屋で焼酎のロックを呑みました。あれ?ウイスキー?これがなかなか美味い。芋焼酎とはまた違った味わいで気に入りました。それは百年の孤独という麦焼酎で、後日酒に詳しい知人からある小説の題名にちなんで名付けられたと教えられました。
読んでみようと書店で探すもありません。それから数年後、すっかりそのことを忘れていましたが、大型の書店の海外文学のコーナーでたまたま見当たりました。なんだか立派な書籍で、持ってるとカッコ良さそう。ブックカバーはお断りして読み始めました。
難しい。難解というより、先が見えない。文字を追うのですが、自分が想起している情景が合っているのか判りません。でも何せ読んでいるのがカッコ良いと思っているものですから読み進めるよりほかありません。まず同じ名前が出てくるが、どうやら違う人物だぞ、さっきまでの話と今の話はどうつながるの?わかりません。そりゃ誰も読まんわ、と当時思っていました。
それからまた数年。村上春樹がノーベル賞か、と騒がれた際、過去の受賞者で作者であるガルシア=マルケスの名前を見つけました。ノーベル文学賞受賞!本の帯にそんなの書いてあったかな。何せカッコ良い感じにしたいがため、帯はすぐに捨ててしまっていました。インターネットで調べると、どうやらかなりの名作らしい。先の焼酎も、社長が読了後感動して本人に直談判してその名を冠する了承をとりつけたそうです。
2回目の読書。インターネットであらすじは確認済みです。前に読んでるのに、あらすじ読んで結構納得していました。果たして2回目の読書が終わり、一息ついての感想は、「やっぱわからん」。もちろん何が書いてあるかはわかり、ちょっと荒唐無稽のところは興味深いのですが、巨大な敵を倒したり、犯人を当てるといったことはありません。でもちょっと満足感はありました。テーマはよくわかりませんが。栄枯盛衰?

難しいことを難しく伝えるのはおすすめできない、などと仕事の場面ではよく言っています。私自身、努めて平易な表現にするようにしています(つもりです)。そこでは、情報が過多にならないよう、言葉を削って削ってという作業を頭の中でしています。スライドの資料なども、言葉を削ってすっきりさせることで満足していました。一方、言葉を尽くす資料などは「Busy」なんて表現がよくされますが、あまり好みではありませんでした。そんな価値観が潮流でもあったのですが、最近はしっかりと表現することが必要だとの主張がよく見られるようになりました。スライドでポンチ絵を描くのではなく、文章で構成して内容を伝えることが大切だと。

百年の孤独がベストセラーなのは、難解なストーリーでもそれを知りたいと思わせる魅力があるからですよね。(私だけが難解と感じているだけかもしれませんが、、、)
単純化して相手に示し、理解を得るだけではなく、惹きつけられるための何かがあると良いなと最近考えています。言葉を紡ぐことの大切さ。それは、決して難しい話をして相手を煙に巻くことではなく。

最近百年の孤独が文庫化されました。うーん、3回目どうしよう。

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エグゼクティブコンサルタント

毎野 正樹

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