コラム

COLUMN
Vol.52

AIは人事の仕事を奪うのか

2026/06/04

先日、91歳になる母に「最近はAIに手伝ってもらいながら仕事をしている」と話したところ、母はどうやら鉄腕アトムのような存在を想像したようでした。
「いや、まだ握手はできないんだよ」と、二人で大笑いしました。

でもAIはすでに私たちの仕事のすぐそばにいます。姿は見えないし、握手もできません。けれど、考えを整理し文章を整え、時には自分では思いつかなかった問いを投げかけてくれる。
アトムとは少し違いますが、たしかに“仕事の相棒”のような存在になりつつあります。
50代半ばを超えたリクルート出身者が集まる弊社でも、AIの話題は尽きません。
歴戦の強者たちもAIを前にして、新人のようにはしゃいでいます。

妄想癖のある私は、またもAIは人事の仕事はどう変えていくだろうかと妄想してみました。
例えば、採用。AIが本人の適性、学習履歴、思考特性、価値観、行動データ、面接での受け答えを基に、職務との相性をかなり高い精度で分析するようになるでしょうね。適性検査や面接の時間を大幅に短縮してくれるのでしょう。

次に、評価。現在は成果と行動の2つの評価を行うことが主流ですが、職場での行動のみならず、AIは日々のアウトプット、会議での発言、メールのやりとり、資料作成、顧客対応、周囲への支援行動など、幅広くデータを拾えるようになり、上司が見ていない努力や貢献も可視化されるかもしれません。

配置なども今は組織の要請とともに自己申告制度やキャリアプランシートのようなツールを使っていますが、AIによって企業全体の人材データ、組織課題、事業戦略、メンバー同士の相性、メンバー個々の経験の組み合わせを見て、より良いフォーメーションを提案できるようになるのでしょうね。すでに軍隊やスポーツチームのように配置の巧拙が成果を左右する組織では使っているかもしれません。
ちょっと想像してみても、すばらしい技術です。

反面、採用での判断をAIに任せきりにすると、AIが入社前の早期に人の可能性を決めつけてしまう危険もあります。人は人との出会いによって、化けることがありますから、その可能性の芽を摘むことになりかねません。
配置は単に「効率化、最適化」ではありません。本人の意思や覚悟、偶然の出会いによる成長も含まれての配置なんだと思います。
評価では、「測れることだけが評価対象になる」という危険も感じます。人の成長には、まだ結果になっていない努力、葛藤、試行錯誤、修羅場や土壇場の踏ん張りが欠かせません。評価対象になることだけ頑張るけど、それ以外は努力しなくなる危険性すら出てきたりします。
やはり、AIにすべてを任せるにはリスクが伴うことも容易に想像できます。

今回はAIが進化し続けると人事の仕事を奪ってしまうのかという問いに対して、妄想してみましたが、“AIが進化すればするほど、人事には「人を見る力」がより一層問われる”という思いに至りました。
AIは人事の仕事を奪うのではなく、人事から「作業」を奪ってくれるだけで、人事に残るのは、人をどう見るか、その人の何を信頼するのか、任せるのか、待つのか、どう育てるかという、最も人間くさい仕事が残る、そのような思いに至りました。

Editor Info.

エグゼクティブコンサルタント

平田 伸正

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